音楽とまちづくり〜やっちゃえ!ジブン

横浜都筑のまちでコミュニティカフェやったり、音楽したり。こどもたちとまちづくりしたり。

思いつきをビジネスにする!

音楽の仕事をしたい!と地元名古屋を飛び出して、川崎の高津に住んでいた頃の事だ。
少しずつ少しずつ音楽の仕事が入ってきていたものの、まだまだ、来月の家賃は払えるかヒヤヒヤしているような状態だった。

バンドでデビューできないかなと、淡い夢も捨てられなくて。自分達が売れなくても楽曲提供とかないかな→印税収入・・みたいな夢を持っていた頃。一緒にバントをやっていたボーカリストが「肺活量を増やさないとバンドで歌えない。清志郎さんもエアロビクスにいってるらしい」と話しているの聞いて、溝の口イトーヨーカドーの中にあるフィットネススタジオに通うことにした。貧乏生活につき、当時月額五千円の会費は痛かったけど、でもサウナもシャワーもあるから、お風呂代わりだからいいんだ!とか言い聞かせて。

私はなにかにハマりやすいのか。それとも会費を払っているからフル活用しなくちゃ、と思ったのか、時間さえあればエアロビクスやマシンに通い、ジムのトレーナーが驚くほど体脂肪を減らし、結果を出していった。

★なんでもビジネスにできないかを考えていた
転んでもただでは起きない私。
エアロビクスのレッスンを受けていて、使われている音楽に疑問を持った。
先生がBPM(曲のテンポのこと)をあげるために、オリジナルを勝手に編集しておかしな音源を使っていた。CDが一般的になっていた1990年前後だったが、フィットネス業界は、まだカセットテープで、回転が変えられるデッキを使って、レッスンのスピードに合わせて音楽を変えて使っていた。だから音も悪いし、曲もむちゃくちゃな状態でのレッスンだった。それが気になり、もっとまともな音楽でエクササイズしたいな、と思って調べたところ、「日本にはエアロビクスのレッスン用の音源をつくっている会社はひとつもない」ということがわかった。全部アメリカからの輸入だった。
これはビジネスになるのではないか?

アメリカから輸入したものを、売っている業者はあったけど、日本で作っている会社はない、私なら日本人好みの、レッスンしやすい音楽がつくれるのではないか?と思ったのだ。

★日本人好みのオリジナル音源だから、外国製品より高くても売れる・
音楽制作費で外注しなければならないのは、エンジニアとダビングする経費だ。曲をつくってアレンジするのは私が自宅でやれば、最初の現金支払いは発生しない。最小限のリスクでできるビジネスだ。

1つの商品に、10曲程度。エンジニアには安くて申し訳ないけど、1曲1万円でお願いしたとして10万。最初は歌手も入れずにサンプリング音源を多様に使い、打ち込み(シークエンサーやパソコンでの作業)で作成し、10曲入りの4本の作品を作ることにした。外注40万。
1つの商品を500本プレスして、1本2500円で売る。
1本が完売したら125万。4本つくったから2000本全部売れれば500万だっ!

投資として、エンジニアに40万。ダビング業者に依頼して2000本プレスが40万くらい。
節約するために、曲目は自宅プリンターでまめに印刷して、手動でカットして入れ込むことにした。
ここまでが商品をつくる作業。

★顧客が確実に見る雑誌に広告を出した
どういうところにリーチして売るか、と考えたときに、業界の人が読む「フィットネスジャーナル」への広告掲載を思いついた。確かにスタジオにも置いてあったし、エアロビクスの先生ならほぼ100%読んでいる、とフィットネスの先生をする友人に聞いて、雑誌の4分の1広告8万円を投資することにした。使える身内は全部使う私は、広告の仕事を名古屋でしている弟に、版下製作を1万円で依頼した。全国に1万人5千人(当時)いるインストラクターが顧客だ。

製品名は、エアロビートコレクション「Aero Beat Collection」と決めた。
ABCという頭文字もなんかよい。

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いまも発売されている、CDジャケット。


製品をつくるに3ヶ月くらい費やして、できたと同時に広告を出し・・・。

★販売作業
忘れもしない、フィットネスジャーナルの発売日が明日!という日の夕方から、電話がジャンジャン鳴り出した。しまった・・・受付時間を入れ忘れたと思ったのだけど、その日は23時くらいまで電話がなり、そのほとんどが注文の電話だった。そう・・・「こういうの探していたんです」というお客様の声。やった〜〜と思った。それから約1週間は電話が鳴りっぱなし。音楽の仕事どころではなくなり、毎日エアキャップに製品をくるみ、住所を宛名書きして、郵便局にいく作業が続き、アルバイトを雇わなくてはやっていけなくなった。

それから1回2本ほど、年に6本くらいは新しいシリーズを出した。少し投資できるようになったので、オリジナルだけでなく、昔なつかしい歌謡曲をエアロビクス用にアレンジしたりして、ボーカリストに依頼し自宅レコーディング。ちゃんとJASRACに登録して許諾をもらい、発売し続け、、、。だんだん忙しくなり、1人アルバイトを雇って、月20万くらいを払えるようになり、少ないけどボーナスも払っていた。

★次のマーケットへDM発送
広告だけでなく、フィットネススタジオが経費で購入する、ということもあるのでは?と思い、図書館にいって、全国のフィットネススタジオの住所を書き写し、約3000くらいにDMを送った。一回DMを送る作業は当時アナログ作業が多く、大変だったし、郵便代だけで20万以上かかったけど、それ以上の反響があった。一度売れれば、売れたときに次のDMをいれればいいので、直接DMを送ったのは最初だけだ。日本の楽曲も取り入れて、演歌や歌謡曲をエアロビクス用に編曲したので、公民館などの公的施設が購入してくれたり、大学の研究室がシリーズ27本まるごと買うということもあった。

制作費がかかるのは最初のみ。1本つくるのに30万~50万かかったとしても(自宅スタジオのため破格でできる)一定数以上うれればあとは、プレスする1本200円がかかるだけ。200円が2500円になる、ということだ。(送料はお客様負担で、郵便局で代引きを使えるように業者登録もした)

「Aero Beat Collection」でヒットしたシリーズは1本2000本は売れたと思う。1本で400万を稼ぎ出す。年間6本作れば2400万。まあ、そこまですべてが売れなかったけれど、まわりのミュージシャンを巻き込んで、とにかく27本まで作った・・・・。音楽制作だけではなく、製造、販売まで。

この頃から、他から依頼される音楽の仕事が忙しくなり(やったあ〜)、27本もつくるとさすがにネタもつきてきて、製造を一旦休むことにした。やとっていた人も週3日だけきてもらうことになった。

新しいものは出ないの?と問い合わせはたくさんあったけど、過去のものをちょっとマスタリングして、カセットテープからCDに変えて販売していたら、今度は日本エアロビックフィットネス協会から、依頼があり、そこで売る製品を委託でつくることになっていった。

実はもう20年も前に作ったものも含めて、まだときどきプレスされて販売されている。
日本フィットネス協会の販売サイトのJAPANシリーズ!

日本語の曲 - 公益社団法人日本フィットネス協会 オンラインショップ(一般用)



ビジネスは素人で手探りだったけど、これは絶対に行ける!と思ってやったことがプチ成功した、という経験を積んだ。シリーズをつくっていたころは、委託の音楽の仕事もどんどん増えてきたころで、売れっ子漫画家のように睡眠時間2時間くらい。その頃子どもも生まれて、必死だったなあ。

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実は、先日からソーシャルビジネススタートアップ講座に通い始めた。

massmass.jp


さてさて過去の経験が役立つかどうか。